いの×jubeat

『jubeat』に出会った瞬間から沼にハマった

―『jubeat』を始めたきっかけを教えて下さい。

いの選手 (以下、いの) : 小学校高学年から中学生のはじめの頃はゲームセンターでは太鼓の達人、家庭用ではドンキーコンガやリズム天国で遊んでいました。
中学2年生の時に友人に「面白いゲームがある」と誘われてゲームセンターに行った時に『jubeat』と出会いました (当時はripples append)。
当時のオラオラ系の友人が隅田川夏恋歌を遊んでいるのを横目で見て、そこから今に至るまで約15年ほど遊んでいます。

―そこから『jubeat』を本格的に遊ぶようになったのはいつ頃ですか。

いの : 出会った当時 (中学二年生) からです。遊び始めて「このゲーム面白いな」と感じ、それまで遊んでいた太鼓の達人にかけていたお金をそのまま『jubeat』に注ぐようになりました。なので出会った瞬間から沼にハマったとも言えますね (笑)。

―いの選手は他の選手に比べKAC等大会で結果を残している数が多い印象ですが、他の人より上手くなろうと思ったきっかけなどはあるのでしょうか。

いの : 授業中やバイト中もずっと『jubeat』のことしか考えていなかった時期が他の人よりも長かったからだと思います。それこそ『jubeat』というゲームにぞっこんで、友人との付き合いもほどほどに青春の全てを『jubeat』に注いだ結果、実力がついてきてくれたと考えています。

―当時、『jubeat』のコミュニティには入っていましたか。

いの : 入っていました。当時はモバゲーやmixiがSNSの主流だったので、そこからランカーの方と交流したり発言をみて感銘を受けたりしていました。また地元のゲームセンターのチームに入らせてもらっていました。
当時の自分のホームのゲームセンターがジアス上大岡店で、そこに『jubeat』のトップランカーの人たちが来るようになり、自分のプレイを目にかけてもらいそこから神奈川勢の方々とも交流し、時には教えてもらったり時には技術を盗みながら自分の腕を磨いて上手くなれたのかなと思っています。

自分自身についてとことん研究する大切さ

―そうして実力を伸ばした結果、KAC等の大会に出るようになったと思うのですが挫折などは味わったことはあるのでしょうか。

いの : 挫折という挫折を味わったことはないです。とにかく『jubeat』というゲームが楽しくて、出来ない譜面をどうやって出来るようになるのか試行錯誤しながらそれこそ数百回でも出来るようになるまでやりますし、出来た時の達成感が堪らなくてさらに『jubeat』というゲームの沼にハマっていくだけでしたね。
それこそcopious appendのJOMANDAが追加された時に難易度10を全て制覇したのですが、そこから低難易度制覇を始めたりしてこのゲームは本当に無限に遊べるなと感じていました。
ただ、あえて挫折というかはわからないのですが自分の中で印象に残った大会があり、それが天下一音ゲ祭 全国一斉認定大会 (第1回天下一音ゲ祭) です。あの時決勝大会まで出場することはできたのですが、緊張しすぎた結果譜面が全く見えなくなってしまいました。
さらにこの大会では2台筐体があったのですが、内部のパーツや細かなバージョン違いの差で判定が全く異なっていました。その結果、下から数えた方が早い順位となってしまいました。そのことは非常にショックでしたね。
もちろん練習自体は沢山しました。それこそ第1回天下一音ゲ祭は課題曲も4曲しかなかったので、どの曲も10回程度はExcellent(理論値)を出していましたが、本番では「Ignis Dance」で判定を見失って確か983とか985くらいで終わってしまいました。

―それから6th KACでは団体部門で決勝まで、そして7thKACから9thKACまで団体部門3連覇という偉業を達成したわけですが、第1回天下一音ゲ祭から得られた教訓等はありましたか。

いの : めちゃくちゃありました。自分は非常に負けず嫌いだったので、もう二度と第1回天下一音ゲ祭の様な惨敗はしないと決心して、大会に向けて色んな対策をするようになりました。
まず筐体の型番を確認して、その型番は自分にとって判定が前なのか丁度良いのか後ろにあるのかを逐一チェックした後、筐体ごとに合わせて精度を取る練習をしました。
また、普段どれほど上手くプレイできたとしても本番のプレイが下手であれば当然勝つことはできません。なので、どういう状況であればスコアが高くなりやすいのかを自分自身について研究していきました。
例えば気圧の変化でスコアが変わるか、睡眠時間はどう影響するか、仕事や人間関係等のトラブルがあった時のスコアはどうか、さらに前日と当日の食事でどう変わるか等ですね。
にんにく食べた方がスコア出るなとか。それと、色んな人がエナジードリンクを飲んでいると思うのですが、私はエナジードリンクを飲まない方がパフォーマンスが良くなるみたいでした。
それと、『jubeat』はアグレッシブに腕を動かすゲームなので筋トレをしたり、体幹トレーニングをして緊張しても身体がブレないようにしたりと、自分自身の身体のコンディションを調べてスコアが伸びるのであればそれを取り入れていく、というのを続けていきました。 その結果が良い形として出たのではないかなと思っています。

―7th KACから9th KACでは☆ゴリあーにゃ★というチームで連覇を成し遂げたわけですが、☆ゴリあーにゃ★のチームはどういう経緯でメンバーが集まったのでしょうか。

いの : 6thKACの後、ぺが選手から「次回のKACで一緒に団体部門に参加しよう」と勧誘されたところから始まります。残り2人はハリモグラ選手とつくね選手に声をかけました。
ですが、ハリモグラ選手は自分が6thKACで所属していたチームに入ることを後に知ることになり、勝てるチームメンバーが作れないと当時は意気消沈してしまいました。
ただその後、CR*ROKA選手とさとる選手のペアがまだチームが決まっていないことを耳にしました。
CR*ROKA選手とは知り合いだったので、彼に「ハリモグラ選手が俺が抜けたチームに入ったらしいから、それを後悔させたい。一緒のチームで戦ってくれ」といった旨のメッセージを送りました。本人は半ば困惑しつつも承諾してくれて、チームメンバーが決まりました。

―そしてチームで練習をし始めたと思うのですが、対策や作戦などはありましたでしょうか。

いの : 7th KACではチームメンバー全員がプレイすることが必要で、課題曲の範囲も膨大だったため、全員で全ての課題曲を対策しようと練習していきました。

―7thKACで初めての優勝を達成することが出来ましたが、その時の気持ちを教えて下さい。

いの : 本当に嬉しかったです。自分の人生の最高到達点はここかなと感じていました。優勝した時の配信のアーカイブを見て貰えるとわかるのですが、リーダーのCR*ROKA選手と一緒に床にごろごろ転がってましたし。感極まっていたなと思います。

―そこから色んな大会で優勝することになりますが、一番勝って嬉しかった大会はどれになるでしょうか。

いの : KACだけなら7thになります。『jubeat』人生という意味でなら7thKACとjubeatech 2017がほぼ同率かなと。

―大会や『jubeat』で苦労したことはありますか。

いの : 課題曲の範囲の広さです。レベル10全てだったり、あるいは全く課題曲の範囲が公表されていない場合数百曲という膨大な量をこなすことは大変ですし、今も頭を悩ませています。頭の容量が持たないです (笑)。

―それであれば課題曲はどれくらいの曲数がいいですか。

いの : これは難しい問いで、例えば第1回天下一音ゲ祭は課題曲が4曲しかなくてその曲の仕上がりで勝負したわけですが、参加者全員の仕上がりが極まっているので1つのミスで負けてしまう緊張感があります。
なので今のKACの課題曲数くらい (40~80曲) が一番なのかなと。

―いの選手はHARDMODE (通常より判定が厳しいモード) は遊ばない印象がありますが。

いの : 遊ばないですね (笑)。 自分の肌には合わないので。
もう少し深堀りすると、自分にとって『jubeat』の面白さは運指を組むことにあると思っています。これは他の音楽ゲームにはない要素で、1つの小節を切り取ったとしても取り方は人によって千差万別だと思います。この運指を自分にとっての最適解を見つけるのが楽しいですし、押し方の流れ等芸術的要素が個人的にはあると思っています。
それがHARDMODEだと『BeatmaniaⅡDX』のJUST GREATと同じ判定幅と記憶しているのですが、そうなると綺麗に押す余地が無くなってしまいます。
それは自分が求めている『jubeat』の楽しさとは違うと感じています。なので中々遊ぼうと思わないという状態が続いています。
さらに言うなら、『jubeat』は『BeatmaniaⅡDX』や『SOUND VOLTEX』などの新筐体と違い、筐体も古くモニターのFPSも120ではありません。その様な古い筐体で極度の判定を狙う意味ってあるのかな、とも思っています。
もちろんKACに出場するためにHARDMODEをやらざるを得ない時はしぶしぶやっていましたが、同じタイミングで同じ入力をしたにも関わらず光らない時があり、「自分が悪いとは思えない」と感じることもHARDMODEを敬遠する理由の1つです。
正直HARDMODEで予選をやっていた9thKACでは予選通過の枠が広がってなければ個人部門での通過は難しかったと思います。ただ決勝は通常判定でしたので、大暴れしてやろうと意気込み、結果個人部門においても準優勝になることができました。

―『jubeat』をプレイしている時にどういう心持ちで遊んでいますか。

いの : 『jubeat』の大会に出るにあたって、まず大前提として譜面を覚えている必要があると思っています。その譜面の記憶力において、自分は他のプレイヤーよりも秀でていると自負しています。それこそ1年ぶりにプレイするものであっても譜面の流れや気をつけなければいけない場所などは何となく覚えています。その結果大会で大きな事故を起こすことがないのかなと思っています。
大会の対策としては、記憶の上書きというか練習して補強していくことを繰り返しています。
その途中で押しづらかったりミスをしてしまう場所が出てきた場合、運指をとにかく考え抜きます。この時、運指の組み方にも2通りあります。
1つはスコアは出るが安定性に欠けるもの。1つはスコアは少々犠牲になるが大事故は起こさない安定したもの。自分は後者を選択しつつ、より精度も良くなるものを選んで運指を組んでいく作業を曲ごとにやり続けます。

―CR*ROKA選手以外は当初そこまで面識はなかったと思いますが、仲良くなるきっかけはどういうのがありましたか。

いの : 特にそういったものはありません。普通に食事をして話をして、普通のお付き合いをしていった結果仲良くなりました。特別なことはしてないです。

―いの選手はぺが選手と仲が良い印象がありますが、ぺが選手と仲良くなった経緯等はありますでしょうか。

いの : ぺが選手とは2ndRCで初めて会ったのですが、その時から礼儀正しい子だとは思っていました。仲が良くなったのは『jubeat』に『BeatStream』の移植曲として「Sky High」が伝導曲として入った時に、「誰か伝導してくれないかな」とSNSで呟いた時にぺが選手が承諾してくれた時から一緒に遊ぶようになり、そこから定期的に遊んでいく内に仲良くなりました。

―いの選手にとって☆ゴリあーにゃ★とは?

いの : 正直紆余曲折ありました。7thKACではチームメンバー内で大喧嘩があったり、8thKACでも別件で言い合いになったりもしました。でもその結果雨降って地固まるという形で強固な絆が生まれ、今では4人で『jubeat』関係無く遊んだり、4人揃うと安心する気持ちになります。色々ありましたが良いチームだと思いますね。

―また☆ゴリあーにゃ★のメンバーで組んで大会等に出たいですか。

いの : 全員が全盛期の実力であるという仮定の上でなら組みたいです。自分含めてチームメンバーの大半が極度の負けず嫌いなので、負けると雰囲気が悪くなる気がします。
なので今はたまに会ってご飯を食べる関係性が一番いいのかな、と思います。

もっと『jubeat』に人生をかけて欲しい

―前身の大会からさとる選手と組んで戦っていますが、さとる選手とパートナーになった経緯を教えて頂けますか。

いの : まず☆ゴリあーにゃ★のチームメンバーの誰かと組めればいいなと考えていました。それと初回優勝の栄誉も欲しかったので、勝てるパートナーを探していました。その結果ぺが選手かさとる選手のどちらかにしようと考えました。
最初にぺが選手に声をかけましたが断られてしまい、さとる選手に声をかけたら自分以外誰も声をかけていなかったらしく、なら一緒にやろうという形になりました。

―今回の大会に向けてどのように戦っていくか考えはありますか。

いの : さとる選手とも話はしたのですが、自分たちは歳もとっているので短期決戦で勝つ作戦で望みたいと思っています。長期戦になると体力的に若い世代の人たちとは厳しい戦いになるかなと。

―今回の大会はいの選手から見れば新世代の人たちが多く、いの選手は旧世代という形になると思いますが、新世代の人たちに対する思いなどはありますか。

いの : 新世代の人たちの中でも上と下で差が大きいと思っています。なので下の方にいる人達はすぐ近くに最高峰の人たちがいるので、その人達を参考に伸びて欲しいというのが率直な感想です。
それと、音楽ゲームと人生のバランスを上手く取っているなとも思います。自分のやり方がよいとは思いませんが、大学4年の間に1〜2年くらいは『jubeat』に全部を捧げてもいいんじゃないかなとは思ったり思わなかったりもします。
それとランカーの層が薄くなっていることも懸念点かなと思います。そのあたりがもう少し厚くなって欲しいとも願ってはいます。

―そうなるともっと若い人たちには『jubeat』に人生をかけろと。

いの : 平たく言えばそうなのですが、『jubeat』お金が稼げるような機種ではありません。全盛期の大会では1つミスするだけで負けるなんてこともありましたが、今はそういう状況でもありません。その様な状況で人生をかける理由が無いというのも理解できます。
そのあたりはやきもきしてしまいますね。

―いの選手にとって『jubeat』とは。

いの : 青春であって人生です。今年29歳ですが、15年という半生を『jubeat』に捧げてきて、今でも楽しめるゲームです。一言で言えば最高のゲームかなと。墓に筐体を持っていきたいくらい大好きです。

―最後に『jubeat』をこれから遊ぶ人に一言頂ければ。

いの : 『jubeat』を遊ぶ上でどこを目指すかにもよりますが、どんな腕前の人でも凄く楽しいゲームだと私は思っています。なのでまずは『jubeat』そのものを楽しんでプレイして欲しいです。
そこから新しい曲、あるいは新しい人と素敵な出会いがあると思いますので、まずは100円を筐体に入れて楽しんでもらえたら嬉しいです。

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